chapter6 高齢者共同住宅事業所協議会の設立について


 平成12年5月に札幌市社会福祉協議会から懇談会の案内が来ました。
趣旨は札幌を中心に高齢者共同住宅が次々に開設し現在では道内60ヶ所に達しており施設、サービスの格差が激しく先行きを危惧しての事が伝わって来ました。高齢者共同住宅の営業については法的に何ら規制が無く行政としてはその実態すら把握する部署もありません
 札幌市社会福祉協議会の岩見さんがいち早く現況を掴み入居される側の立場から高齢者が安心して生活出来る民間の施設でないと将来的に生き残れないのではないかと教えられました。法的規制の無いものに行政が指導も出来ず、誰かが音頭を取り事業所が自主的に協議会を作り質の向上を計る旨も併せて教えられました。集まった側の事業所も大半は開業はしてみたものの入居者不足に悩んでいる事が判明致しました。夕日ケ丘山荘の当初と同じ道を辿っている事も解りました。
 特に平成12年4月から施行された介護保険をにらみ病院、老健施設から社会的入院を打ち切られる人を見込んでの開業が目に付きました。
 事業である以上利益の追及が必要ですが、高齢者共同住宅を儲けの対象として参入される事ほど腹立たしいものはありません。
 高齢者共同住宅の質の向上を計り、道民に寄与するする事を目的に仲間に賛同を呼び掛けたところ20の事業所が私の指に止まって来ました。医院を開業しながら清田で夕日ケ丘山荘よりも2年も前に高齢者共同住宅を始めていた和泉さんに会長を引き受けてもらい札幌市社会福祉協議会と北海道長寿社会振興財団及び北海道シルバーサービス振興会の顧問就任を得て平成12年7月19日に北海道高齢者共同住宅事業所協議会が設立致しました
 設立にあたり協議会の主たる事業は入居を希望される方に「高齢者共同住宅の情報の提供」と経営する側からは「事業所の存在を社会に知らせる手段」としてガイドブックの発行が決まりました。
 ガイドブックを作成するにあたり20の事業所全てと協議会に加入しない所も含め実際に見て回りました。社協の岩見さんが心配するとうりでした。新築の鉄筋コンクリートにバリアフリーはもとよりエレベーター、オートロック、個室にはトイレ、風呂、台所、非常ベル、オール電化の施設から古くなった民家の二階を利用した施設まで様々でその格差に驚きました。一番多いのは学生相手の下宿屋さんが学生が集まらず満室にするために高齢者も一緒に入居させているケースで6畳の個室には小さな物入れがあるだけです。中には築30年程たった古アパートを一棟丸借りして高齢者共同住宅の経営に参入してきたところもあります。共同トイレの施設が高齢者共同住宅事業に参入してくる事業者に怒りすら覚えます。そのような施設で協議会に加入してきた事業所にもいくつかあります。しかし今後少しでも改善の気持があれば私どもの仲間としてやって行けると期待しています。老人ホームをリストラされた20才の娘さんがある企業の不要になった鉄筋4階建の社員寮を借りて高齢者共同住宅を始めると言うニュースが新聞、テレビで大きく報道されました。
 非常に情けない気持ちで一杯でした。私ども夫婦が今日まで頑張って来たのは何だったのか。60年近く生きて得たものをこれからの人生で少しでも社会に貢献したいと思い夕日ケ丘山荘を建設したのです。
 お年寄りの食事の為に栄養士、調理師の資格があれば安心と信頼を得られる筈だし、建設中にはホームヘルパーの資格も得ました。建物の建築許可申請では保健所の飲食店営業許可及び旅館業営業許可を義務付けられました。 金融機関には融資の担保として土地建物を提供しました。失敗したら全てを失うのです。もう後には戻れないのです。
 アルバイト先をリストラされた20才の娘さんが気軽に始められる程の仕事だとは今でも思いたくありません。
 高齢者の生命と財産を守り、豊かな気持で老後を共に生きようとする方達のお役に立ちたいと願う仲間が果たして何社になるのか増えるのか減るのか非常に楽しみです。
 協議会設立後3ケ月念願のガイドブックが完成しました
いち早く札幌市役所の高齢福祉課が全区の高齢福祉の窓口に置くよう対応してくれました。道の担当部署も全道 212町村の窓口に配布してくれました。行政に配布されたと同時に北海道新聞が写真入りで報道したので事務局担当の私の所には電話が鳴り続きました。5000部印刷したのですがもう幾らもありません。
 ほとんどの方が将来の住まいとしてガイドブックを参考に興味を持っている事が判りました
 道民のために寄与する目的の一つが達成された思いです。
しかし私にとって一番の収穫は話合える仲間が出来た事です。夕日ケ丘山荘がオープンして丸3年嬉しい事の10倍位悲しいこと辛い事の連続でした。 この度の協議会設立からガイドブック発行に至るまで幾度となく会合を持ちましたが雑談の中で出る本音が皆さん同じ事に気付きました。自分だけで悩んでいた事の多くが無駄な事だったのです。
 私はとにかくこの仲間を大切にこれからも頑張りたいと思います。

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